ベクトル データベースとは?

ベクトル データベースとは、ベクトル埋め込みを整理して集めたものであり、あらゆる時点で作成、読み取り、更新、削除できます。ベクトル埋め込みは、テキストや画像などのデータのかたまりを数値として表します。

埋め込みモデルとは?

埋め込みモデル は、テキスト、画像、グラフ、動画などのさまざまなデータを数値ベクトルに変換し、その意味とニュアンスを多次元ベクトル空間で捉えます。埋め込み手法の選択はアプリケーション ニーズに左右され、セマンティックの深さ、計算効率、エンコードするデータの種類、次元などの要素のバランスで決まります。

man、king、woman、queen という単語がマッピングされたベクトル空間。出典: baeldung

このようにベクトルを多次元空間にマッピングすることで、ベクトルの意味的類似性を微妙な部分まで分析できます。検索とデータ分類の精度が大幅に強化されます。埋め込みモデルは、検索エンジンなどさまざまな用途の他に、ベクトル データベースと共に AI チャットボット大規模言語モデル (LLM)検索拡張生成 (RAG) を使用する AI アプリケーションで重要な役割を果たします。

埋め込みモデルはベクトル データベースでどのように使用されますか?

企業のプライベート データが取り込まれると、チャンク化され、それを表すベクトルが作成されます。データ チャンクとそれに対応するベクトルは、後で取得できるようにオプションのメタデータと共にベクトル データベースに保存されます。

埋め込みモデルは、データを取り込み、ユーザーのプロンプトを理解するために使用されます。

ユーザー、チャットボット、AI アプリケーションからクエリを受け取ると、システムはそれを解析し、埋め込みモデルを使用してプロンプトの一部を表すベクトル埋め込みを取得します。次に、プロンプトのベクトルを使用してベクトル データベースでセマンティック検索を実行し、正確な一致か、最も類似する上位 K 個のベクトルとそれに対応するデータ チャンクを見つけ、プロンプトの文脈に当てはめてから LLM に送信します。LangChain と LlamaIndex は、AI チャットボットと LLM ソリューションの作成をサポートするオープンソース フレームワークとして広く普及しています。人気のある LLM には、OpenAI GPT や Meta LlaMA があります。人気のあるベクトル データベースには、Pinecone や Milvus などがあります。最も人気のある 2 つのプログラミング言語が Python と TypeScript です。

ベクトル データベースの類似検索とは?

類似性検索は、ベクトル検索、ベクトル類似性、またはセマンティック検索とも呼ばれており、次のような類似性メトリックが指定されたとき、それに基づいて所与のクエリのベクトル埋め込みに意味論的に似ているベクトルを AI アプリケーションが効率的にデータベースから取得するプロセスを指します。

  • ユークリッド距離: ポイント間の直接距離を測定します。全体的な差異が重要となる密の特徴セットをクラスターにする、あるいは分類する目的で役立ちます。
  • コサイン類似度: ベクトル間の角度に注目します。テキスト処理や情報検索に最適であり、従来の距離ではなく、方向に基づいて意味論的類似点を捉えます。
  • マンハッタン距離: 直交座標の絶対差の合計を計算します。グリッドのような構造の経路探索や最適化の問題に適しています。疎データで便利です。

類似性測定メトリックは、AI チャットボット、レコメンデーション システム、ドキュメント検索で関連項目の 効率的な検索を可能にします。データの意味論的関係を活用して生成 AI プロセスに通知し、自然言語処理 (NLP) を実行することでユーザー 体験を強化します。

ベクトル検索のクラスタリング アルゴリズムとは?

クラスタリング アルゴリズムは、共有特性に基づいてベクトルをまとまりのあるグループに整理します。ベクトル データベース内でのパターン認識と異常検知が簡単になります。

3D グラフィックスはクラスター化されたベクトルを示します。これは実際には多次元です。

このプロセスは、データセットのサイズを小さくすることでデータ圧縮を支援するだけでなく、基礎となるパターンを明らかにし、さまざまな分野に貴重なインサイトも提供します。

  • K 平均: 重心の近接度に基づいてデータを K 個のクラスターに分割します。大規模なデータセットに効率的です。事前定義されたクラスター数が必要です。
  • DBSCAN と HDBSCAN: 密度に基づいてクラスターを形成し、外れ値を区別します。クラスター番号を指定せずに複雑な形状に適応します。
  • 階層的クラスター化: データ ポイントを凝縮的に結合するか、分裂的に分割してクラスター ツリーを作成します。階層データの視覚化に適しています。
  • スペクトラル クラスタリング: 類似度行列の固有値を活用して次元を減らします。非線形分離可能データに有効です。
  • 平均シフト: 密度関数の最大値を見つけることでクラスターを特定します。クラスターの形状とサイズは自由に変更できます。事前定義されたクラスター数は必要ありません。

アルゴリズム アプローチの多様性はさまざまなデータの種類とクラスタリングの目的に応ずるものであり、 RAG アーキテクチャでベクトル データから意味のある情報を抽出するうえでクラスタリングの多様性と重要性を強調します。

ベクトル データベースにおけるインデックス作成の役割は何ですか?

ベクトル データベースのインデックス作成は、高次元のデータ空間内で検索するとき、その効率性と速度を高めるうえで重要な役割を果たします。ベクトル データベースに格納されるデータの複雑さと量を考えると、クエリに最も関連するベクトルをすばやく見つけて取得するには、インデックス作成メカニズムが不可欠です。ベクトル データベースでのインデックス作成の主な機能と利点の内訳は次のとおりです。

  • 効率的な検索操作: K-D ツリー、VP ツリー、逆インデックスなどのインデックス付け構造では、データセット全体を網羅的に検索する必要が減るようにデータを整理することで、検索操作を高速化できます。
  • 拡張性: インデックスを作成すれば、データベースのサイズに合わせて検索操作を効率的にスケールできるため、データ量が増えてもパフォーマンス レベルを維持できます。
  • レイテンシの短縮: インデックス作成は検索のスピードを速め、クエリとそれに対応する結果の間のレイテンシを大幅に減らします。このことは、リアルタイムやほぼリアルタイムの応答を必要とするアプリケーションにとって非常に重要です。
  • 複雑なクエリのサポート: 高度なインデックス作成手法は、高次元空間を効率的にナビゲートすることで、最近傍検索、範囲クエリ、類似性検索など、一層複雑なクエリをサポートします。
  • リソース使用量の最適化: 効果的なインデックス作成によって、検索に必要な計算リソースが最小限に抑えられます。そのことはとりわけクラウドベースの環境や分散環境においてコスト削減につながり、また、システムの持続可能性を向上させます。

要約すると、インデックス作成はベクトル データベースのパフォーマンスと機能性の基礎であり、複雑で高次元の大量のデータを迅速かつ効率的に管理し、検索することを可能にします。この機能は、レコメンデーション システムやパーソナライゼーション エンジンから AI を活用した分析やコンテンツ検索システムまで、幅広いアプリケーションに不可欠です。 RAPIDS cuVS は、インデックス作成にかかる時間を数日から数時間に減らせる GPU 高速化を提供します。

ベクトル データベースのクエリ処理とは?

ベクトル データベースのクエリ プロセッサは、従来のリレーショナル データベースで使用されているアーキテクチャとは根本的に異なります。ベクトル データベースでのクエリ処理の効率性と精度は、クエリの解析、最適化、実行など、複雑な手順にかかっています。

CAGRA アルゴリズムは並列プログラミングの一例です。

最近傍識別や類似検索などの複雑な操作を処理するには、大規模なデータを効率的に管理するシステムの機能をさらに強化するために、cuVS の CAGRA などの並列処理アルゴリズムと共に、高度なインデックス構造を使用する必要があります。

この包括的な手法により、ベクトル データベースではユーザー クエリに迅速かつ正確に応答できます。情報取得で迅速な応答時間と高レベルの精度が維持されます。ユーザー クエリが処理されると、その埋め込みが取得されます。その後、意味論的に同様の埋め込み (ベクトル) がないか、その取得された埋め込みを使用してベクトル データベースに問い合わせるため、効率的です。

 

ベクトル データベースの拡張性に影響するものは何ですか?

RAPIDS cuVS のようなライブラリを利用するなど、ベクトル データベースの GPU 高速化 は、パフォーマンスを損なうことなく、データ量と計算処理要求の増加に対処するために不可欠です。AI やビッグ データ分析は徐々に複雑になることが一般的ですが、データベースの高速化でそれに適応できます。その際、API の背後で垂直スケーリングと水平スケーリングという 2 つの主な戦略が採用されます。

垂直スケーリングでは、計算リソースをアップグレードすることで容量を拡張し、同じマシン内でデータセットをもっと大きくし、操作をもっと複雑にできます。水平スケーリングでは、データとワークロードを複数のサーバーに分散することで、システムで管理できる要求量を増やし、変化する需要に対して高い可用性を維持できます。

アルゴリズムと並列処理の最適化が、とりわけ GPU による最適化が、効率的な拡張の鍵となります。こうしたアプローチによりデータ処理と取得タスクを合理化し、システムの負荷を最小限に抑えます。GPU とその並列処理機能は特に役に立ち、大量のデータが必要な計算を高速化し、ノードをまたいでスケールするデータベースで高いレベルのパフォーマンスを維持できます。

 

ベクトル データベースのデータ正規化とは?

ベクトル データベースのデータ正規化では、ある共通のスケールに合わせてベクトルを調整します。これは、クラスタリングや最近傍探索など、距離ベース演算で一貫性のあるパフォーマンスを維持するために重要なステップです。この標準化を得るために、データ値を指定の範囲内 (通常は 0 ~ 1 または -1 ~ 1) に収まるように調整する min-max スケーリングや、データの中心を平均とし、標準偏差を 1 とする Z スコア正規化のような一般的な手法が利用されます。

こうした手法は、さまざまなソースや次元からのデータを比較可能にするうえで極めて重要であり、データに実行される分析の精度と信頼性を高めます。この正規化プロセスは機械学習アプリケーションで特に不可欠であり、特徴スケールの差異によって引き起こされる偏りを取り除くうえで役立ちます。モデルの予測パフォーマンスを大幅に改善します。

データを正規化することで、すべてのデータ ポイントが一貫性のあるスケールで評価され、ベクトル データベースに格納されているデータの品質を高めます。機械学習の成果が一層効果的なものとなり、たくさんのインサイトが得られます。

 

ベクトル データベースではハッシュがどのように使用されますか?

ハッシュは、ベクトル データベースを機能させるための基本となる概念です。高次元データをシンプルな固定サイズの形式に変換し、ベクトル データベース内のベクトルのインデックス作成プロセスと取得プロセスを最適化します。局所性鋭敏ハッシュ (LSH) などの手法は効率的な近似最近傍探索に特に役立ちます。計算の複雑さが軽減され、クエリ処理の速度が向上します。ハッシュは、大規模で高次元の空間を管理し、効率的なデータ アクセスを確保し、さまざまな機械学習と類似性検出タスクをサポートするうえで重要な役割を果たします。

ベクトル データベースのノイズ除去とは何ですか?

ベクトル データベースのノイズを減らすことは、類似性検索や機械学習タスクなど、さまざまなアプリケーションでクエリの精度とパフォーマンスを向上させるために重要です。ノイズを効果的に除去することで、ベクトル データベースに格納されているデータの品質が向上するだけでなく、情報検索の精度と効率も上がります。そのために、さまざまな手法を採用できます。ノイズのさまざまな側面やデータの複雑性に対処できるよう、それぞれの手法が調整されています。

こうした手法では、ノイズから学習し、ノイズを除去するように作られたモデルを採用することに加え、データの簡素化、正規化、改良に重点が置かれています。手法の正しい組み合わせは、データの性質とデータベース アプリケーション固有の目的を考慮することで選択できます。

次元削減と正規化: PCA やベクトル正規化などの手法は、無関係な特徴の除去とベクトルのスケーリング、ノイズの削減、クエリ パフォーマンスの向上に役立ちます。

特徴の選択とデータの整理: 重要な特徴を特定し、データを前処理して重複やエラーを削除することで、データセットを合理化し、関連情報に焦点を当てます。

モデルのノイズ除去: ノイズの多いデータからの入力を再構築するノイズ除去オートエンコーダーを利用することで、ノイズを無視するようにモデルが指示され、データ品質が向上します。

ベクトルの量子化とクラスタリング: この方法では、ベクトルを類似の特性を持つグループに編成し、データ内の外れ値や分散の影響を軽減します。

埋め込みの改善: ドメイン固有のアプリケーションでは、追加のトレーニングや手法 (改良など) で埋め込みの精度を上げ、ベクトルの関連性を高め、ノイズを減らします。

ベクトル データベースでのクエリ拡張の仕組みとは?

ベクトル データベースでのクエリ拡張では、関連する用語をクエリに組み込むことで検索クエリの効果が向上します。検索範囲が広がり、データ検索の包括性が高まります。この手法では、意味論的な類似性をもっと広い範囲で捉えるようにクエリ ベクトルを調整します。ユーザーの意図にもっと近くなるように調整し、一層徹底的なドキュメント検索を可能にします。そうすることで、クエリ拡張は検索結果の精度と範囲の両方を大幅に改善します。ベクトル データベースの情報検索の効率と効果を高めるために重要な方針となります。

ベクトル データベースのデータ視覚化はどのように行われますか?

ベクトル データベースでは、高次元のデータをわかりやすいビジュアルに変換し、分析と意思決定を支援するために、データの視覚化が不可欠です。主成分分析 (PCA)、t分布型確率的近傍埋め込み法 (t-SNE)Uniform Manifold Approximation and Projection (UMAP) などの手法は、次元を減らし、複雑なデータに隠されているパターンを明らかにするために重要です。このプロセスは、生データでははっきりとわからない貴重なインサイトを明らかにするために不可欠であり、複雑なデータ パターンを一層明瞭に伝えることを可能にし、データを活用する戦略的意思決定を推進します。

ベクトル データベースでデータ疎性はどのように処理されますか?

疎行列表現と特殊な処理手法により、ディープラーニング アプリケーションのストレージ効率と計算パフォーマンスが向上します。ベクトル データベースで疎データを効果的に管理し、分析できます。

NVIDIA Ampere GPU アーキテクチャの Tensor コアに疎性サポートが導入されました。

データ疎性に取り組むには、高次元のデータセットで一般的なシナリオである、主にゼロ値で構成されるベクトルを効率的に処理する必要があります。圧縮行格納 (CSR) や圧縮列格納 (CSC) などの疎行列形式は、主にゼロであるデータを、ゼロ以外の要素のみ格納することで、効率的に格納し、操作できるように設計されています。

対象を絞った手法には、計算オーバーヘッドとメモリ使用を大幅に減らす疎行列に合わせて最適化され、処理と計算を速くするアルゴリズムなどがあります。こうした方法は、高次元のデータを処理するための機械学習とデータ サイエンスにおいて重要であり、データ処理と分析タスクの効率を上げ、レイテンシを少なくします。

ベクトル データベースでデータの整合性を確保する方法は?

エラー検出、堅牢な暗号化、データ管理、定期的な監査などの高度な手段によって防御の精度、一貫性、セキュリティに重点的に取り組み、ベクトル データベース内でデータの整合性を維持することは非常に重要です。NVIDIA NeMo™ はこのプロセスを増強するものであり、データの管理と整合性を強化する特殊な AI ツールを提供します。このフレームワークの機能は、データベースの信頼性を強化する AI モデルの作成と管理にまで及びます。これは、詳細にデータを分析し、機械学習アプリケーションを前進させるための土台となります。ベクトル データベースの複雑なデータセットを操作し、分析するためには、土台となる部分が信頼できることが不可欠です。NVIDIA は NeMo を通じてそれを伝えたいと考えています。

次のステップ

ベクトル検索の詳細を見る

NVIDIA の技術ブログでベクトル検索の詳細をご覧ください。

RAG 用語集ページを読む

ベクトル データベースが検索拡張生成 (RAG) モデルの効率性と精度を向上させる仕組みをご覧ください。

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