Web スケールのネットワークについて

プライベート、パブリック、ハイブリッドの各クラウド環境への移行に際して、オープンな分散型かつモジュール型のデータ センター ネットワークを採用し、大幅なコスト削減、柔軟性、スケーラビリティを実現する企業が増えています。Web スケールのネットワークの最新アーキテクチャでは、運用コスト (OpEx) を大幅に削減することで総所有コスト (TCO) を削減しながら、データ センターにスケーラビリティと俊敏性をもたらすことができます。

トピック

  • ソフトウエアデファインド ネットワークと Web スケールのネットワークの比較

    Web スケール ネットワークは、いくつかの重要な構成要素を持つ、インフラストラクチャに対する最新のアーキテクチャ アプローチです。企業は、次の 3 つの構造を採用することで、費用対効果が高く俊敏な最新のネットワークを設計できます。

    • オープンかつモジュラー型
    • ソフトウェアのインテリジェンス
    • スケーラブルかつ効率的

    オープンかつモジュラー型

    主要な企業の間で、オープンかつモジュラー型のソフトウェアの採用が広がっています。主要な企業では、ネットワーキング スタック自体を構築することなく、超大規模データ センターの設計における効率目標を達成するため、この新しいオープンなアプローチを導入し始めています。このシステムを早期に採用した企業は、高価で柔軟性が低い旧来のシステムから脱することができました。これにより、ネットワークの拡張や変更をすばやく行い、より多くのアプリケーションを低コストで迅速に提供できるようになります。オープン ネットワークは、DevOps と連携します。双方を組み合わせると、自動化ツールやプロビジョニング ツールにより、ネットワークの構成や運用をすばやく行えます。DevOps により、IT の文化、ツール、プロセス、組織構造に与えた影響は、アプリケーションの提供を迅速化し、継続的に実験を行う環境をもたらし、組織において IT 運用に関するこれまでの常識を見直すこととなりました。Web スケールの IT により、これらのアプリケーションをサポートする弾力性の高いアーキテクチャを作成し、IT 運用チームが無駄のない、効率的で、より俊敏なプロセスを実装、サポートすることができます。

    ソフトウェアのインテリジェンス

    ソフトウェアのインテリジェンスとは、本質的には、企業がスマートなオペレーティング システム モデルでスタックを標準化し、オープンなアプリケーションを自由に選択できるようにすることです。ソフトウェアのインテリジェンスにより、ソフトウェアの分離が可能になり、これまでになく選択肢が広がり、柔軟性や効率を高めることが出来ます。

    現在の PC 業界と同様に、オペレーティング システム (Windows や Linux など) を選び、それを実行するハードウェアを (Dell や HP などから) 選択するのと同様に、データ センターのネットワーク スイッチも自由に選ぶことができます。特定のソフトウェアを使用するとしても、そのソフトウェアを実行するハードウェアのベンダーは 1 社だけに限りません。同じく、特定のハードウェアを使用する場合でも、ソフトウェア ベンダーは 1 社だけに限定されません。これによりお客様の選択肢が広がり、コストを大幅に削減できるほか、スケーリング、効率化、自動化に使用するアプリケーションやツールを幅広い製品から選ぶことができるようになります。

    スケーラブルかつ効率的

    リーフ/スパイン (または Clos) アーキテクチャでモジュラー型ネットワークを構築すると、きわめてスケーラブルで効率的です。Clos アーキテクチャでは、最新のデータ センターをレゴ ブロックのように構築できるため、必要であれば超大規模なデータ センターにも対応できます。リーフ/スパイン アーキテクチャでは、全ホストの相互間の距離が等しいため、遅延が予測可能です。また、標準化された完成度の高いルーティング プロトコルにより、等コスト マルチパス ルーティング (ECMP) を通じてすべてのリンクをネイティブに利用できます。冗長性確保と負荷分割にレイヤー 3 ルーティングを使用すると、マルチシャーシ リンク アグリゲーション (MLAG) の制約がありません。MLAG は標準化されておらず、ベンダーごとに異なるため、ペアとなるスイッチはどちらも同一ベンダーのものである必要があります。さらに、MLAG ではスイッチ 2 つの冗長構成が限界であり、片方のスイッチが停止すると帯域幅は 50% に低下します。ECMP を使用してルーティングを展開すると、帯域幅と冗長性をカスタマイズして定義できます。

    オープンで柔軟なアーキテクチャは、新しい大規模なデータ センターで east-west トラフィック (データ センター内のサーバー間またはサーバーとストレージの間のトラフィック) が効率化されるだけでなく、極めて小規模なネットワークから超大規模データ センターまでのあらゆる規模で最適な設計となります。これは、あらゆる規模の企業で、コスト削減と効率性というメリットが得られるからです。

    Web スケール ネットワークの原理は、組織に永続的な影響を与えます。企業では、この新しいアプローチのもとに、ネットワークの設計、運用、実践について全面的に見直し、データ センターの自由度とスケーラビリティを向上させます。

    エンジニア 1 人が運用できるスイッチの増加、ネットワークの複雑さの軽減、ツールとプログラムの標準化、問題を検出する自動メソッドの構築、市場投入期間の短縮など、総合的に優れたネットワークの構築が可能になります。こういった改善により、組織は比較的低コストで効率的にスケールアップすることが容易になります。

    Google、Amazon、Facebook、Netflix を始めとした多くの企業が、従来のモデルでは実現できなかった、幅広く深いメリットを実現する方法を切り開いてきました。このモデルは、組織の規模を問わずあらゆる業界で利用でき、さまざまな企業でこの新しい俊敏な環境のメリットを得ることができます。

  • プライベート クラウド、パブリック クラウド、ハイブリッド クラウドの比較

    プライベート クラウドとは、アプリケーションを実行するデータ センターを企業自身がホストする場合を指します。メンテナンスを行う必要はありますが、多くの場合最も安全性が高く、運用、設計、実行するアプリケーションを完全に管理できます。Web スケール ネットワークの登場により、このモデルは低価格化が大幅に進んでおり、パブリック クラウドよりも安価なことも珍しくありません。

    パブリック クラウドとは、Amazon AWS や Microsoft Azure などの外部プロバイダーがホスティングとメンテナンスを行うデータ センターで、他の企業にリースされます。一般的には、この場合、企業はリース料を支払って、ホスティング データ センターの特定のハードウェアやソフトウェアにアクセスし使用する権利を得ます。簡単な例としては、自社オンライン ストアを Microsoft Azure で実行している場合などがあります。アプリケーションは実際にはマイクロソフトのデータ センターで実行されており、継続的に料金を支払ってアクセス権の提供を受けます。パブリック クラウド方式は選びやすいモデルですが、コストが高くなる場合があり、柔軟性が低いため組織の拡大が制限されることもあります。

    パブリック クラウド環境を使用している企業では比較的小規模なプライベート クラウドを維持している場合も多く、このモデルはハイブリッド クラウドと呼ばれます。ハイブリッド クラウドでは、一部のアプリケーションを自社データ センターから提供すると同時に、他のアプリケーションは有料でリースを受けているパブリック データ センターから提供します。企業がこのアプローチを利用する理由には、さまざまなものがあります。

    • 事前調査: パブリック クラウドを維持しながら、プライベート クラウド環境をテストし、構築したい場合。
    • リソースの制約: 社内のリソース不足により、完全にプライベート クラウド化することができない場合。
    • 多様化: 業務の種類ごとに割り当てる環境を選び、効率を改善したい場合。
    • コスト削減: すべてをパブリック クラウド環境で運用するとコストが高くなるため、分割したい場合。
    • バックアップ: 開発、テスト、バックアップ、冗長性確保、制御の目的でのみプライベート クラウドを使用する場合。

    企業によって異なりますが、多くの場合、最初は事前調査を目的としてプライベート クラウドを導入します。たとえば、従来型のネットワークを使用していて、俊敏性向上とコスト削減を狙って Web スケールの IT ネットワークを作成したいと考えている企業があるとします。このような企業では、新しい環境に慣れるために、まずは重要性が低いワークロードをプライベート クラウドに移行することが一般的です。その後、満足な結果が得られたら、重要なワークロードをプライベート クラウドに移行する作業を始めます。

    プライベート クラウドを最新のアーキテクチャで展開すると、プロビジョニング、容量、パフォーマンス、低コストというメリットを容易に得ることができます。企業がプライベート クラウド環境を構築する場合、大規模な IT 組織を模しています。

    パブリック クラウド環境は、アプリケーションのテストや、高速でスムーズなサービスを実現するために使用され、俊敏性の実現やイノベーションの促進につながっています。また、アプリケーションの提供方法や自社のサポートに必要な内部サービスによっては、プライベート クラウド環境とパブリック クラウド環境を組み合わせたハイブリッド クラウドを展開する企業もあります。

  • Web スケール ネットワークである NetDevOps の利点

    Web スケールの IT アーキテクチャに移行すると、企業にとって多くのメリットが得られます。そのうち、主なものをご紹介します。

    • 効率的に拡張可能
    • 簡単に自動化可能
    • Capex と Opex の両方のコストを削減
    • IT の俊敏性を完全に実現し社内外のアプリケーションを記録的な速さで提供
    • ニーズと予算に基づいてベンダーを自由に選択し組み合わせることが可能

    効率的に拡張可能

    ビジネスの成長に合わせて、Web スケール ネットワークを容易に拡張できます。リーフ/スパイン アーキテクチャでは、ラック数を 3 つから数百に拡張する場合でも、効果的に管理できます。リーフ スイッチのラックを必要なだけ追加し、スパイン スイッチに接続するだけです。規模が大きくなりすぎる場合は、ネットワークに階層を追加できます。非常にシンプルなモジュール設計であり、水平方向のトラフィック (サーバー間通信) と垂直方向のトラフィック (外部からデータ センターへのアクセス) の両方に最適化されています。このモデルでは、既存のネットワークに変更を加えることなく拡張することができます。

    簡単に自動化可能

    Linux ベースのスイッチを使用してネットワークを標準化すると、既存の自動化ツールと DevOps の実践法をすべて活用できます。NetDevOps という用語を耳にした方も多いと思いますが、その意味は名前のとおりです。

    NVIDIA は、ネットワークとコンピューティングでの一貫した体験を実現します。構成やプロビジョニングからポリシー ベースの変更管理まで、ネットワーク デバイスの運用ライフサイクル全体を自動化できます。NVIDIA® Cumulus Linux を使用してこのような最新のネットワーキング アプローチを自動化すると、コスト削減、効率改善、オペレーター 1 人あたりの運用スイッチ数の改善、複雑さや問題の軽減が可能になります。

    IT の俊敏性の完全な実現

    最新のデータ センター ネットワークでは、自動化が進んでいます。新しいラックや、その上で稼働するアプリケーションやサービスを、従来のモデルよりもはるかにすばやくデプロイできます。Open Networking Install Environment (ONIE) は、オペレーティング システムの自動読み込みに使用されます。ゼロタッチ プロビジョニング (ZTP) は初期構成に、DevOps ツールはラック上のすべてのサーバーとスイッチの構成やメンテナンスに使用されます。つまり、サーバー、およびサーバーを接続するスイッチを同時にオンラインにできるため、アプリケーションの提供までに必要な時間を短縮できます。このため、IT チームは、より高度なサービス レベル アグリーメント (SLA) のもとで、従来よりはるかに短いデプロイ時間でアプリケーションを提供できます。

    ソフトウェア開発、QA、IT プロフェッショナルの知識とプロセスを組み合わせた DevOps により、ソフトウェアの開発とテストをより協調的かつ俊敏に行う斬新な方法が実現され、一般公開 (GA) までの期間が短縮されます。この方法をネットワークに取り込んだものが NetDevOps と呼ばれます。

    NetDevOps という考え方により、IT 企業は、ソフトウェアやハードウェアのシステムが故障したときに火消しとして呼び出される 24 時間 365 日体制のサポート チームではなく、信頼できるパートナーと見なされるようになります。IT 部門は、事後対応的な障害復旧チームではなく、先手を打って対応するパートナーとしての本来の役割を果たします。この考え方は、現在世界中のデータ センターで採用が進んでいる Web スケールの IT アーキテクチャにも自然と入り込んでいます。

    選択の自由

    オプティクスに至るまで、ソフトウェアとハードウェアを独立して選択できると、コストを削減できるだけでなく、ニーズに合わせて最適な選択することが可能です。

  • Web スケール ネットワークに利用できるテクノロジ

    NVIDIA は、自動化とスケーラビリティを意識して設計されたソリューションを提供する、インテリジェントなソフトウェアとテクノロジを開発しています。当社のネットワーク オペレーティング システム (NOS) である Cumulus Linux は、50 を超えるベンダー プラットフォームで動作し、柔軟なオープン アーキテクチャ、迅速な IT 提供、自動化、スケーラビリティが実現可能です。パケット転送モード (PTM)、イーサネット VPN (EVPN)、ネットワーク コマンドライン ユーティリティ (NCLU) などの自社開発機能を使用して、Web スケール ネットワークのアプローチを最適化するテクノロジを継続的に拡大しています。

    また、NOS はパズルのワンピースに過ぎないことも理解しています。最新のデータ センター ネットワークをさらに簡単にすばやく構築し稼働させることができるように、さまざまなサービス、製品、学習資料を提供しています。

    Web スケールのデータ センターを構築するときには、効率、電力、組織全体のニーズに応じて、どのような種類のテクノロジを利用するかを検討する必要があります。NVIDIA では使用事例やソリューションに関する情報を複数提供していますが、Web スケールの IT のメリットは、お客様の企業のニーズにぴったりフィットしたネットワークを構築できることであると考えています。ここでは、参考になる使用事例をいくつか紹介します。

    ネットワーク仮想化

    ネットワークを仮想化すると、ネットワーク層の基盤ハードウェアへの依存がなくなります。たとえば、仮想ローカル エリア ネットワーク (VLAN) はレイヤー 2 を仮想化するもので、ローカル ネットワークを個別のサブネットワークに分割します。これは、同一ハードウェア ケーブル内のトラフィックの分離によく使用されます。また、仮想化されたネットワークでは、レイヤー 3 ネットワーク上でレイヤー 2 セグメントが実行されます。クラウドのプロビジョニングの仕組みと同様に、仮想化によってネットワークのプロビジョニングが可能になり、必要な数のインスタンスを作成し、成長に応じてスケーリングすることができるようになります。

    NVIDIA は、Cumulus Linux を通じた VMware、Midokura、Akanda などのベンダーのネットワーク仮想化ツールと相互運用することができ、モデルやアーキテクチャを自由に選択できます。このネットワーク コンポーネントは、シンプルでシームレスな構造になっています。

    ネットワークの自動化

    自動化は Web スケール ネットワークの重要なコンポーネントであり、リソース要求やエラーの削減、オペレーターが多くのスイッチを管理するのに役立ちます。オープン ネットワーキング モデルを選択すると、企業は既存の自動化ツールを利用しながら DevOps を実践できます。

    コンピューティングの世界で何年も使用されてきた自動化ツールが、ネットワークの世界にいくつも移行されてきました。Cumulus Linux を使用すると、構成やプロビジョニングからポリシー ベースの変更管理まで、ネットワーク デバイスの運用ライフサイクル全体を自動化できます。ネットワークの自動化により、構成と運用が容易になるとともに迅速化され、人為的ミスやバージョン管理による不整合や構成ミスを排除できます。

    OpenStack

    オープン ネットワーキングという方法を利用できるようになるまでは、OpenStack クラスターは Top-of-Rack スイッチと同程度の柔軟性を有する唯一のものでした。コンピューティングとストレージではオープンな標準を利用可能でしたが、ネットワークは依然としてボトルネックとなっていました。

    しかしこれが、Web スケール ネットワークによって完全に変わります。Cumulus Linux では、スタック全体で Linux を実行できます。データ プレーンと制御プレーンで同じ言語が使用されるため、複雑なコンピューティング アプリケーション プログラミング インターフェイス (API) やネットワーク コマンドライン インターフェイス (CLI) は不要です。

  • Cumulus Linux と SONiC で Web スケールの IT をサポートする仕組み

    NVIDIA は、Web スケールネットワークの最先端を走っています。ネットワークは、データ センターの重要な部分でありながら、これまでアプリケーションの迅速なデプロイにおけるボトルネックとなっていました。しかし、Web スケールの IT アーキテクチャのアプローチがネットワークでも可能になります。

    Cumulus Linux や SONiC を使用すると、Google や Facebook が長年にわたって行ってきたように、高度に自動化された手順でデータ センター ネットワークを運用できます。開発時間をかけることも高価な専用ハードウェアも必要ありません。一方で、自動化を望まないお客様に向けて、スイッチ構成用の先進的なコマンドライン インターフェイスを提供する NCLU も開発しました。

    ハードウェアのコストは従来の IT モデルの 6 分の 1 程度に抑えられますが、運用の面ではその差はさらに劇的で、管理者 1 人あたりの運用スイッチ数は従来の 20 基から 500 基に増加し、プロビジョニングの所要時間は数日や数週間から数時間や数分にまで短縮されます。

    お客様の企業にとって NVIDIA がどのように貢献するかご興味をお持ちでしたら、今すぐ Web スケール IT のエキスパートにご相談ください。

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